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2007年12月 4日 (火)

『マーティン・ドレスラーの夢』スティーヴン ミルハウザー(著)

「昔、マーティン・ドレスラーという男がいた」。
これ以上ないと思えるほど、簡潔で力強い書き出しが目を射る。
19世紀末から20世紀初頭のニューヨー ク、
葉巻商の息子に生まれ、ベルボーイからホテルの経営者に登りつめた男。
それがこの小説の主人公だ。
では、本書はアメリカン・ドリームの物語なのだろう か?

   たしかに半分はそうである。
なぜならこれは「夢」に関する物語だからだ。
当初、いかにも現実の歴史に沿うよう展開していた出世譚は、
マーティンのホテルが次々と建造されるにつれてゆがみ、
やがて夢幻のごとき色彩を帯びてくる。
ホテルの内部には、森や滝、本物の動物が走り回る公園、キャ ンプ場、
はては地底迷路などという、現実には考えられないたぐいの施設が増殖、
それに歩調を合わせて地下へ地下へと層も広がってゆく。
ついにマーティン は、それ自体でひとつの社会と化したかのような
巨大ホテルをつくり上げるが、あまりにも常識を凌駕していたため
世に理解されず、その絶頂にもかげりが訪れ る——。

   きわめて独特な物語世界だが、圧巻はホテルの描写だろう。
輪舞のように次々とつづられていく奇怪ともいえる施設の数々。
読み進むうち、いつしか読者はもうひとつの世界を築く快楽に加担している。
アメリカの歴史を借りて紡ぎだされた夢幻境。
それこそ、著者が創造しようとした ものにほかならない。

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受信: 2007年12月 4日 (火) 01時16分

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