『塵に訊け! 』ジョン ファンテ (著)
無頼の作家チャールズ・ブコウスキーがその作品中、
好きな作家として挙げたことをきっかけに再発見されたジョン・ファンテ。
『塵に訊け!』は作者の分身アルトゥーロ・バンディーニを主人公とする
ファンテの自伝的なシリーズの代表作である。
作家になるべくやってきた夢のカリフォルニア。
社会の片隅に追いやられた人々の生きるロサンゼルスの裏町を舞台に、
バンディーニの夢と焦り、そしてカミラとの恋が、
ユーモアと痛みを交えつつ語られていく。
バンディーニは、さまざまな人種の人間がうごめくロサンゼルスという街を動きさまよい、
自由自在に語る。その語り口は端正かつ軽妙だ。
そして最後に、恋は意外にも苦い結末を迎える。
長年本国でも絶版が続いていたものの、
現在は人気・評価とも不動のものにしたジョン・ファンテ。
<訳者あとがき>で述べられているように、
ジェイムズ・エルロイがロサンゼルスを代表する作家を問われた際、
ファンテをまっさきに挙げたことからもこの作家のいま位置する場所がうかがいしれるだろう。
『塵に訊け!』の発表は1939年とかなり昔になるが、
ロサンゼルスを描いたアメリカ青春小説の「新しい」古典として読んでもらいたい。
本書にはその再評価のきっかけを作ったブコウスキーによる<序>が収録されている。
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