『悲しみを聴く石』アティーク ラヒーミー (著)
せまくて何もない部屋に、戦場から植物状態となって戻った男が横たわる。
その傍らで、コーランの祈りを唱えながら看病を続ける妻。
やがて女は、快復の兆しを見せない夫に向かって、
自分の悲しみ、疼き、悦びについて、
そして誰にも告げたことのない罪深い秘密について語り始める。
夫は、ただ黙ってそれを聞き、時に、何も見ていないその目が、
妻の裏切りを目撃することになる--
原題の「サンゲ・サブール」とは、ペルシア語で「忍耐の石」。
その石に向かって、人には言えない苦しみや悲しみを打ち明けると、
石はそれをじっと聞き、言葉や秘密を吸い取り、ある日、粉々に打ち砕ける。
その瞬間、人は苦しみから解放されるという、ペルシアの神話からとられている。
著者はフランスに亡命したアフガニスタン出身の映像作家・小説家。
初めてフランス語で綴った本作は、
デュラスやサルトル、ベケット、ヘミングウェイを彷彿させると評され、
いきなりフランスの文学賞最高峰ゴンクール賞を受賞。
はたして、石は砕けるのか、悲しみは消え去るのか。
圧倒的なラストまで読者の瞬きを許さぬ衝撃作。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
最近のコメント