『鉄腕ゲッツ行状記—ある盗賊騎士の回想録』 ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン (著)
義の騎馬武者か、盗賊騎士か?
舞台は16世紀前半の神聖ローマ帝国。
ドイツの地にもルネサンスが開花し、宗教戦争の嵐が吹き荒れていた。
この大転換期にあって、
中世以来の騎士の特権を振りかざして暴れ回った男がいた。
われらが主人公ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲンだ。
子供時代からの暴れ者で、さる辺境伯の小姓として数々の戦闘に参加、
皇帝マクシミリアンからは直々に声をかけられている。
20代半ば、1504年のバイエ
ルン継承戦争で右腕を失うが、
精巧な鉄の義手を得るや自由に剣をあやつり、
「鉄腕ゲッツ」の異名を帝国中に轟かせる。
(ちなみにこの義手は現存。
手首や指
の関節は自由に曲げることができ、
スイッチによりバネで元に戻るというスグレ物。)
本書の魅力は、滅びゆく騎士階級とその時代の実像を余さず伝えていることだ。
ゲッツは君主に仕える道を選ばず、あくまでも独立の騎士として生きようとする。
そのためにフェーデという「自力救済手段」、
ありていに言えば私闘や強奪をくり返す。
繁栄する都市や貴族・司教に正義を振りかざしつつ難癖をつけ、
金品を奪ったり身代金を巻き上げたりするのだ。
五年にわたる二度の投獄と武闘の日々を経た晩年に書かれたこの自叙伝では、
ドイツ農民戦争での農民側隊長としての体験や、
決闘・襲撃の一部始終が実にいきいきと語られており、
文化史の一級資料であるばかりか興趣つきぬ読物となっている。
前代未聞・痛快無比の一冊!
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)