J-8:(ジャンル)アジア文学

『 わたしの名は「紅」』 オルハン パムク (著)





十六世紀末のイスタンブル
舞台は1591年の冬、
オスマン・トルコ帝国の都イスタンブルでの雪の九日間の出来事である。
帝国は十六世紀前半に政治的にも、経済的にも、文化的にも最高の円熟期に達したあとで、
色々な面でそろそろ問題が出てき始めた時期である。
政治的な腐敗、長く続く泥沼化した戦争、物価高、インフレに悩む市民、
疫病の流行、大火、退廃的な風潮、乱れた世相と、
これら全ての悪の根源は預言者の言葉にそむいたためであり、
葡萄酒の売買を許したためであり、
宗教に音楽を取り入れたためであり、
異教徒に寛大であったためであったといって、
この機会を利用して市民の間に入り込み,広がりつつあるイスラム原理主義者の動きがある。
敗北を知らなかったトルコ軍はこの少し前、
レパントの海戦(1571)でヴェネツィア共和国とスペイン王国のキリスト教連合艦隊に
初めて敗北を喫して、西洋の力に対する畏れを身をもって感じ始めた時期でもある。
この時期はまたトルコの細密画の技術が、
その庇護者十二代スルタン・ムラト三世の下で
本家のペルシアの芸術を凌駕する域に達した時代でもある。
 時のスルタン、ムラト三世は翌年がイスラム暦の一千年目に当たるところから、
その在位と帝国の偉容を誇示するための祝賀本の作成を秘かに命じる。
元高官で細密画がわかるエニシテが監督するが、
彼はかつてヴェネツィアで見た遠近法や陰影,肖像画などの手法を取り込むことをもくろむ。
西洋画の技法で細密画を描くこと、
特に肖像画はアラーの神への冒涜行為と考えられる時代である。
物語はやがて殺人事件に発展していく。
事件はイスタンブルで起こるが、細密画にまつわる歴史的解説は、
アレキサンダー、ダリウス、ジンギスカンの蒙古、フラグの西アジア、
チムールの中央アジア、コーカサス、古代ペルシア、ササン朝ペルシア、インドにまで及ぶ
広大な展開を示す。
この本は、その中で西の文明に対比するものとしてイスラムの概念がでてくるが、
イスラム原理主義者の西の影響をよせつけようとしない暴力と独断を、強く糾弾する書である。
進歩的なモスレムの知識人たちと共に、著者はこういう野蛮と独断がイスラムを内から破壊し、
自己批判や変化をおそれることがモスレム社会を後進させるという。
変化をおそれず、西の文明を、よいものは選び受け入れることによって
この危機を乗り越えられるという。


オルハン・パムク - Wikipedia


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『カッコウが鳴くあの一瞬』残雪 (著)




  死と空虚の影を超えて激しい生命へ到ろうとする、
若き中国の俊才の「世界」そのものの物語。


残雪-Wikipedia

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『バラガンサン物語』若松 寛 (翻訳)


バラガンサンとはモンゴル口承文学中、著名な智の権化。
彼の頓知ばなしは広く伝わる。
統治階級の王公・官僚・ラマ僧・金持ち等をユーモア精神で
風刺、嘲弄する愉快な物語。本邦初訳。

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『観光』ラッタウット・ラープチャルーンサップ (著)


タイを舞台に家族、友人の絆を優しく美しく綴る、珠玉のデビュー短篇集。
ーー闘鶏に負け続け、家庭を崩壊に追い込む父を見守る娘の心の揺れを
鮮烈に描く 「闘鶏師」。
11歳の少年が、いかがわしい酒場で大人への苦い一歩を経験する
「カフェ・ラブリーで」。
息子の住むタイで晩年を過ごすことになった老アメリ カ人の孤独が
胸に迫る「こんなところで死にたくない」。
失明間近の母と美しい海辺のリゾートへ旅行にでかけた青年の苦悩を描いた
表題作「観光」ほか、
人生 の哀しい断片を瑞々しい感性で彩った全7篇を収録。
英米の有力紙がこぞって絶賛し、タイ系アメリカ人の著者を一躍文学界のホープに押し上げた話題のベストセラー    

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