2009.09.23

オークと葦





一面僕より背が高い葦に覆われていてた。


風が吹くたびに

葦は揺れることで風の姿を映し出していた。
その葦から次の葦へ。
その先の葦へ。
風はその足跡をつけ、

その姿がどこまでも続くことによって
一面が遥かまで葦に覆われているという帰結に達する事となる。


そして
風が一緒につれてくる
湿気と、すえた有機的な匂いが
沼の存在を示唆していて
自然というロジックがうむ美という体系を想像させた。


僕は耳を澄ませてじっとしていた。


風のようにたゆやかな葦のセッションではなく
もっと乱暴で局地的なノイズを拾おうとやっきなのだ。
彼女が動くことで葦がその場所を教えてくれる兆しを。


僕は見失っていたのだ。


彼女は唐突に僕の前にあらわれた。


白いワンピースは葦とともに軽やかに揺れていた。
その足はそれこそ葦のようにしっかりと土をつかみ。
その髪は
どちらが先に誘惑したのだろう。
風と戯れていた。


ジャン・ド・ラ・フォンテーヌの寓話「オークと葦」の
傲慢なオークと軽やかな葦の対比を持ち出すまでもなく

僕は彼女に御しきれない美しさを感じていた。


僕の「思うがまま」なんて
いささか性というスパイスがききすぎな陳腐な代物だけれど
僕は彼女に「思うがまま」にできやしない
と感じていた。


彼女の一番印象的な部位は目だった。


その目は敵愾心とも興味ともとれる強い光を僕に向けていた。


僕は彼女を探るように


彼女の瞳の色を見定めてやろうと半歩彼女に近寄った。


ザザザッ


一斉に葦が警戒音のように騒ぎ立て

彼女はその中に消えた。


僕は見失っていたのだ。


僕らの言う意味ってやつを。


風と彼女が葦にのせ、

僕から凝り固まった僕から

それを奪いさってくれたのだ。




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2009.09.12

手早く欲求を満たす。


とある政治家がこういった


 民主主義は時間がかかる。
 かかるだけならまだましだが、
 かかるだけでなにも変わらない。


与党は芸能界ばりのスキャンダルの答弁に窮することに慣れ
野党はヤジに安定感すら覚える。



世界は政治家ひとりでまわせるわけではないけれど
時勢にのれば、ひとつの軸となることはあり得る。


そんな例をはるかケネディにまで求めなければならない現状を
政治家はいつまで続けていくのだろうか。


アメリカのセックスシンボルとよばれたモンローとのスキャンダルのような
熱い夜をすごせるセクシーはそこにあるのだろうか。




ハリウッド映画



18禁なんかよりも、アニメが原作のものがはやっている。
それは世に問う形に問題がある。
18禁のきわどい表現や性描写が問題なのではない。
視聴者から子供を排除することが問題なのだ。

子供を引率する親と、それを勘定にいれないと
制作費がペイできないのだ。


エロはネットで、ブロードウェイは漫画で。


これは常識なのだ。


市場経済下での基本の基本


費用対効果。


映画でもなんでも
例えば視聴後「すっきりしない」という人がいる。

そうなんだ?
すっきりしたかったんだ?

1800円払って、あなたはすっきりしたかったんだ。
感動したかったんだ。
感動して涙を流したかったわけだ。
しかも、涙するという形は満たされるという実感をもつのにわかりやすいのだ。


最近小説のレビューで、辛口で攻めると書いている人の文章を読んだ。

「そもそもこういうタイプの男は嫌いなんだ」と主人公をけなした
結果、その作品を中身がない駄作と切ってすてていた。

そうか、あなたは物語に感情移入して、あたかも主人公のようになりたかったんだ?


プロジェクトのコンセプトを考える。


「誰が読んでも理解できる、わかりやすさを!」
社長からいつもいわれる。
その度に本を開き旅に出たくなる。
誰ともシェアできない、自分だけが感じ取った登場人物の心のひだに触れたいと思う。



裸の女神は

全てを許すとにじりよる。
欲求をすべてぶちまけていいと言い寄る。
精子だろうが身勝手な欲望だろうがすべて飲み干してあげると
すべてを欲しがる。
僕は夢中でセックスに明け暮れる。
僕は性に縛られていると思っていた。
しかし、それは氷山の一角でしかなかった。


欲望のわかりやすいカッティングエッジでしかなかった。


感覚が五感に限定されているように

欲望もそうであることに気がつく。


純粋に性欲だけが強い人ってどのくらいいるのだろう?

政治家が金と権力で女を買う場合、
彼は性欲を感じているのだろうか?
支配欲などの権力を感じているのではないだろうか?
その場合むしろ、彼は金を払わないと勃起しないのではないだろうか?



僕は

彼女が要求しているものがようやく見えてくる。

性欲なんて陳腐なものじゃないのだ。

もっと根源的なもの。

もっと複雑な欲のかたちを提示しろといっているのだ。



JFKのファックにモンローは権力を感じたのかもしれない。
ケネディはパワーをセックスに変換できるセンスがあったのかもしれない。
しかも、射精という形は満たされるという実感をもつのにわかりやすいのだ。



僕は

自分の欲と女神から逃げ出した。

僕は

いったいなにが欲しいっていうんだろう。




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2009.09.05

いともはかなくこっけいなのさ。


まわれまわれまわれ

くるくるくるくる
ひらひらひらいら

まわれまわれまわれ

きみは

みぎまわりか
ひだりまわりか

そんなことで定義づけられる。

きみは

それが

優雅か
大胆か

そんなことで意義づけられる。

そんなつもりではなかった。
なんて
回転数をさげちゃあいけないぜ。

まわれまわれまわれ

くるくるくるくる
ひらひらひらいら

まわれまわれまわれ

他人の評価なんて主観でみずもの、
でもないんだけどね。

そんなこといってると
きみがかんじてた
「あんなつもり」
ってのも主観でみずもの、だいなしじゃんか。

きみの声を刷り込んだ磁気テープ
きみの声を0/1に叩き割ったオプティカルディスク。

ああ、きみが走っている姿でもなんでもいいんだよ。
最高に相手を愛している時のセックスだってさ。
そんな冷血な客観的なアンパイアに判定してもらってごらんよ。

きみはなにやったってこっけいさ。

じぶんのなかの

最高の歌声だって
最速の疾走だって
最愛の遊戯だって

じぶんのつもりは

いともはかなくこっけいなのさ。

まわれまわれまわれ

くるくるくるくる
ひらひらひらいら

まわれまわれまわれ

息が切れるまで?
相手に打ちのめされるまで?

いんや。

きみの想いが続くまで。
きみのイメージが膨らむかぎり。

まわれまわれ。


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2009.08.23

夏の日、蝉の声


蝉がないている。


蝉といえば
僕にとって
一番印象深い蝉と言えば

病院の白い壁でけたたましくなく
あの姿なのだ。

幼きころ

川崎病の疑いがあり
その夏を
お茶の水の病院に母につれられて
通院していたことがある。

行くたびに
みたこともないような
太い注射器でめいっぱい採血された。

母は僕をなだめようと
いつも病院の廊下に設置してある自動販売機で
紙パックのジュースを買ってくれていた。
「Piknik」という森永乳業のシリーズだった。

院内は
夏の日差しの外とは違い薄暗く
膝下の薄明るい緑の院内灯が一番明るく
場末のくたびれた旅館の館内のようなさびれた雰囲気だった。
にもかかわらず、じっとり汗をかくような
すべてが曖昧な世界だった。

母が先生と話している間、僕はジュースを飲んで廊下で
待っているのが常だった。

そんなある日

いつもより
暑かったのか
塩っからいものでも食べたからだろうか
それとも
特別にPiknikがおいしかったからだろうか
僕は買ってもらったジュースを
簡単に飲み干してしまって
時間を持て余した僕の目は
白くまぶしい自動ドアの先を見ていた。

パックをちゃんとゴミ箱に捨て、
僕は自動ドアを抜けて駐車場にいた。

採血された腕のガーゼのなかを気にしながら
あてもなくぶらついていると

僕はけたたましく鳴く蝉を見つけた。

とくにそいつを捕まえようというわけでもなかったのだが
「あとちょっと」という高さに止まっていたあいつは
暇つぶしのかっこうの獲物だった。

だけれど
実際にとろうとすると
背伸びしてもかなりの差があることが判明した。
ジャンプをすると逃げられてしまうから、
背を伸ばし、指をすこしずつ上へ上へと。

そんな捕り物はあっけなく解決した。
通りすがりのどかた風のおっちゃんがすっと横に立ち
蝉はすっぽりとおっちゃんの手のなかに収まった。
けたたましい鳴き声は
彼の手の中でくぐもって、
頭上から目の前にやってきた。

「ほれ、とってやったぞ」
彼は僕の手にその手のなかのものを
端からみると
無理矢理にでもおしつけたかのようにぶっきらぼうに入れこんだ。

僕は急遽そのけたたましい騒音の発生源へとなりかわった。
まるでなりひびく目覚まし時計を場違いにならしているかのような
錯覚を覚えた。

僕は彼の姿が見えなくなるのを待ち
すぐさま蝉を手の中から追い出した。

間をおかず、母が僕を捜して外にでてきた。
僕はすぐに
手をずぼんでふいて
母の手の中に手を滑り込ませたのだ。

夏の日、蝉の声
思い出すのはいつもその日のことだった。

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2009.07.13

グランド・ゼロ






いやあね、


どーってことはないんだけどね。



ここんとこ、ずっと頭の中にいるんですよ。





その当時にね
NYに



「グランド・ゼロ」ってバンド名の
ロックバンドがいたら



しかもブレイクなんてしてなくって、
くすぶってるかんじの


どーなってたのかな、なんてね。


大ヒットしたのか?
ぺしゃんこにされて、解散?
それともそそくさとバンド名変更?


とか

どーでもいいんですけどね。






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2009.03.25

みんなこの想像力をどう処理しているというのだろうか?





大好きな作家はポール・オースターだと
宣言することができる。

だけれど、一番頭の中をぐるぐるまわるのは
と言われると
ミシェル・ウエルベックなんだと思う。

ゆがみっぷりといい
性への倒錯といい
まるでむきだしの性器よろしく シニカルに愛と性と生を語る
孤独と性をもてあまし
「自慰」というよりはむしろ「オナニー」な作風が。
都合良く美女とセックスをする主人公。
それでも充たされない有限な自分という有機体。
精液を垂れ流した後に謳歌する愛と言うドラッグがきれた
あとの寂寥の禁断症状を。

気違いじみた小説は
時には神経質過ぎる尖り過ぎたペンシルで。
時には文字が読めないような太めの筆を使って。
ウエルベックの小説を読み終えたその時って
オナニーの後のティッシュとの語らいに近い。
静寂な、性的で静的な沈黙。
孤独と無音と。

ウエルベックは、100%的中する予言を 僕に与えたもうた。

とある主人公は名声も金も美女も手に入れたが 恐れていた。
自分が年老いて年老いて
性的に不能になったあとの自分自身を。
それを想像し、ブルブルと震えるのだ。
世間を包む、メインテーマの「愛」からはじきだされ
マイノリティになった、
もう抜け出すことができないカーストの末端に押し込められた
自分を想像して煩悶してもがいて精液と涙をを垂れ流し。

僕は
性というものに振り回され
苦しんでいるそぶりをみせているが
性のスイッチが切れたあとに、それを嬉々として受け入れられるのか。
性が与えてくれるやすらぎの替わりを僕はその時見つけているのだろうか。

男と女という二項対立という世界原理を解体し
僕は一体どんな世界を見ているのか。
どんな体で綺麗な浜辺に立っていられるのか。
そんなことに煩悶を繰り返すのだ。

こんなことでぐるぐると思考を空転させ、自分自身のことしか
考エラレナイのかと 人は眉をひそめるのか。
こんなどんなどうしようもない想像力をみんな、
どんなふうに処理してるっていうのだ?

個にこだわるなんて流行じゃないとでも口笛でもふけば
なんとなくやりすごせるのか?

ああ、それはだめだ。
だって、僕は、口笛がふけないのだもの。

だけれどさ、想像してみようよ。
仕事もリタイアして、
性的スイッチもオフにして
ガード下の赤提灯で、独りポツンと飲んでいるっていう
あからさまな寂しさの ポーズをとってみたって、

その時にはさ、だれもだれもかれもかのじょも
救う術なんてしらないんだ。
神様は
性的に、つまりは繁殖という生命のシステムからすでに
その個体を除外している。
つまりその時事実的には僕は神様に スポイルされている。

それに抗って、その個体は
昨日と同じく、5年前と同じく20年前と同じく
それを維持するために食物を噛み砕き、咀嚼し、消化するという
一連の生命維持のためのシステムのスイッチをオフしようとなんて
考えない。

ああ、そうか。
神とか世界とかをしっかり考えられるようになるのって
神から世界からスポイルされて

あとはそれらから、脳という考えるシステムを奪われる
その間際にならないと
本当の意味では不可能なのではないかな。
それが、不能者の生きる意味ってやつなのかもしれない。

水を飲もうとして水をこぼした。
絨毯に広がる水と転がるタンブラー。
絨毯からダスターで水を拭う。
布にひろがった水はタンブラーに収まっていた時よりも
やたらにその冷たさを主張している。





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2009.03.09

トランペットとマネキンは同じ色をしていた。




いつのまにか



空が沈黙というものに取って代わられていた。
鳥が飛べなくなってしまって始めて皆その異変に気付いたのだった。
それは何世紀か昔のシャンパンゴールドのような色味だった。
それは共鳴音を出す間際の金属のような緊張を称えていた。



それは打楽器のような、例えばドラムのような地に属する音ではない。
腹の底に響くヤツではない。



それはもっと高音で耳にくるヤツに違いない。
それが始まってしまったら
元空だったものには断層ができ、雨の代わりに我々に降り注ぐだろう
と容易に想像ができた。
ただ、それは硬いのか柔らかいのか、熱いのか冷たいのか。
降り注ぐ沈黙は、我々にとっては比喩の世界の住人でしかなく、
それを想像する術を知らなかった。
それは空に浮くだけでなにもしてこない宇宙船と対峙している状態と似ていた。
沈黙の静けさと好対照に民衆のざわめきは大きくなってきた。



数日後



調理師見習いのせむし男が逮捕された。
手には沈黙と同じ色をしたシャンパンゴールドのトランペットを持っていた。
それを吹こうと天に向かって突き上げた時、逮捕されたのだ。
取調室では執拗な尋問が続いていた。
沈黙の緊張に耐えかねた暴徒に対するスケープゴートにしようというのだ。



「あの人に、麗しいあの人に、オレが捧げられる一番美しいものを
 捧げたかった、それだけ」



せむし男は同じ内容を拙い語彙を駆使して何百通りも繰り返すだけだった。
おどしを飲み込む知性もなく、
体罰に悲鳴をあげるほど身体も敏感ではなかった。
警察はその「麗しいあの人」に打開策を求めた。
その情報はすぐに見つけられたし、本人もすぐに見つかった。



石畳の3叉路の真ん中に、蛍光の黄色の痛んだ髪をした人がその人だった。
彼女は繊細、優雅、重厚なロココ調の素晴らしい出来の椅子に背もたれを前にして、
その歴史と気品を押さえつけるように馬乗りになって坐っていた。
その姿は粗野で厚ぼったくボンデージで締め付けられている肉はもとは
どこの肉だかわからないほどに矯正され随所にはみ出していた。
椅子は完全に彼女に組み敷かれていた。
彼女は醜かった。
ただし、そんな個人の感想レベルの感性なんてこの場で役に立たないくらい
彼女を取り巻いた警官たちにもわかったようだった。
寒いのか暑いのかわからなかった。
不快なのか快感なのかわからなかった。
ただし、その居心地の悪さの源は全て彼女にある、そう思わざるを得ない
風格を彼女は持っていた。
そんな不安定から解放されるには、彼女の前で屈辱的に見える姿で
うずくまる美男子のように彼女のとにかく慈悲を乞う以外にない、
そう思わざるを得ない妖気を彼女は持っていた。
それは素晴らしいボンデージ姿だった。



「どうせ、あいつは「お前の一番醜いとこはその醜い姿に隠れてる貧相な心だ」、
って言ったことについてうれしがっているんだろ?」



「あいつの性感帯は姿形以外ならどこだって。ウブで敏感なのさ。」
「滑稽で哀しいだろ?」



麗しき人は、左手にもっていた鞭を高々と振り上げ、首輪をはめられ、
全裸でうずくまっている男に振り落とした。
それは奇怪なほど高音で哀しい音で周囲を切り裂いた。
それは沈黙に傷をつけ、
沈黙は涙となって世界に降り注いだ。



沈黙が剥げた後にはがらんどうがあるのみで、
世界は涙で溢れた。



世界遺産の水中都市には
何世紀か昔のシャンパンゴールドのような市民の像がここかしこに散乱しているが、
それは寂れた地方都市のデパートの裏側にほおり捨てられたマネキン風情でしかなく。
たちの悪い現代アートのくずのようでしかなかった。



沈黙も哀しみも

すでにシャンパンのアルコールのようにとっくに飛んでしまっていた。




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2009.03.03

死ななきゃなれない冒険家




冒険家は冒険途中に死ぬべきらしい。
カフェで隣の席の
おっさんが熱くなっていた。

そういう意味ではね。
現代冒険をするにあたり
人類に必要なものってなんだかわかるかい??

それは
勇気?
好奇心?

そりゃそうなんだけれどね
それはインフラさ。
単独行ができる環境さ。
むき出しになれる環境さ。
北極にね
橇と毛皮と、あとウィスキー
みたいなね。

宇宙?
まだまだ未開で未熟だから冒険なんてできやしないよ。
ん?
未開だから未熟だから冒険できるんじゃないかって??
それじゃあ君は宇宙に単独行でいけるのかい?
むきだしになれるのかい?
NASAの管制塔なんかとアメリカンジョークなんて
いってちゃあだめなんだぜ?
アポロ13は別の勇敢なんだぜ?

SFなんてもんが20世紀になってなんでしきりに描かれたかわかるかい?
それはむきだしになりたかったのさ。
まどろっこしかったんだよ、宇宙でむきだしになれるほどの
技術が進歩するのを待つのが。

おっと話がそれたね。

そのおっさんの言い分ってなかなか示唆に富んでいて難しいことを
扱ってるのだ。

冒険家は冒険途中に死ぬべきらしい。

冒険ってのは純粋なことを言ってしまえばね
見た事も聞いた事も想像した事もないリスクを取るってことだとしたら、
きっと
冒険家は人生で一回しか冒険なんてできないんじゃないのか?
ってことが頭をよぎるのさ。
二回目からは一回目の追体験なんじゃないか?
「前よりも危険なリスクを!」と考えたとき、自分でリスクを
作ってしまうのではないか?

そうするっていうと、そのおっさんの理論を突き詰めて行くと
「冒険家は最初の冒険途中に死ぬべきらしい。」
ってことになるね。

○○家って専門家ぶってそれでお金を稼いじゃったら
冒険家なんて言ってしまったら、汚れちゃうんちゃいますか?
おっとそもそも論だけど
こんな話カフェでカフェラテ飲みながら離すことじゃなかったね。




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2009.02.25

契ることが目的で守ることなんて二の次なのさ。





「心中」

心中(しんじ(ぢ)ゅう)は、相愛の二人が一緒に自殺すること。
情死。
転じて2人以上で一緒に自殺することにも用いる。
正確に意訳できる英単語はなく、大和民族独自の死生観と言われる。
心中とは他人に対して義理立てをする意味で用いられていた
(心中立。しんじゅうだて)が、江戸時代には、
刺青や切指等の行為と同様に男女の相愛を意味するようになる。

心中立には、
誓詞(せいし)、
放爪(ほうそう)、
断髪、
入れ墨、
切り指、
貫肉
があった。


日本独自といえば「粋」が有名だが、
「心中」もそうらしい。

江戸時代社会現象にもなり、禁止令もでた「心中」に
いたく共感するのは
その生をもって思いを云々する、というところではない。

それは

closedな関係を欲している

というところだ。

友達の友達、その友達なんていうふうに広がって行く友好関係を陽
とするならば、こちらは陰。

僕は確実に陰の関係に重きをおく傾向にあるし
それが強まっている自覚もある。

その2人逢う以外になんの生産性もない関係に憧れて、
ともかく、約束を契りたくて
血を流し、涙をながし。
それが蔓延する社会。

そんな社会が危ういかというと、実はそれでも飄々と生き延びる
生命力も持っている。

契りは契約ではなく、
契りは将来の心変わりを罰する番人ではない。
契りはまさにその交わした瞬間の心の証明、ただそれだけである。

だからこそ、
未来のどんな悲劇だって

傷つき、傷さへも糧に。
涙で、苗を育て。

誇りになんて思わない。
でも、
ぢっと自分の手をみてその血潮を思うとき
自分の中に同じ物が流れていると
しみじみ思う事がある。

それがなにかの証明であるかのように。





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2009.02.22

スタイル





年をとりゃあさあ

スタイルもかわる。
ひっこんでたもんがでっぱったりさ。
重力と癒着関係になったりさ。

そう、スタイルって変るんだよ。

変るからスタイルなんだよ。

ライフスタイル

とか

ビジネススタイル

とか

決めちゃうってことは、変化をとめるってこと。

矛盾はそこに潜んでいる。

スタイルはセンスだと思う。

それは波になんなりと乗れるとかそーゆーことだ。

それも大事だ。

でも、それだけじゃきっとだめなんだ。

そこに波がこなくなるってことだってあり得るんだし。

もっと根源的ななにかを探ろうとするとき

僕は本を読み

よくわからない文章を書きたくなる。




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2009.02.05

プラチナブルー=イグアナ




そのうらさびれた山里の
街のはずれのポストよりもさらにはずれのタバコ屋の
主であるヘンリーは
数年前から
自分に禁煙を課すとともに
自分の店にも禁煙令を敷いていた。

街を通り抜けるトラックの窓から投げ捨てられた雑誌の
とある記事が事の発端だった。

都会で今時の分別のある上流の人々は
もう、タバコなんて吸わないのだそうな。
都会で今時の綺麗な麗しい婦人は
もう、タバコなんて害悪としか思っていないそうな。

ヘンリーはその雑誌をすぐに炉にくべて灰にしてしまった。

それを他の街の輩で、つまりは客となる人間に
読ませたくなかったからだろうか?
皆が読んでタバコの売上が減るのを恐れたからであろうか?
それだったら、ヘンリーは今、こんなにもタバコを嫌ってはいまい。

ヘンリーはひとり、タバコを辞め、その理由を誰にも明かさなかった。
自分だけが上等な人間だとタバコを買い求めてくる輩を侮蔑の表情で
そのタバコを選んでいる背中を突き刺すような眼差しで眺めていたものだ。

ヘンリーの優越感は営業時間中は充たされ続けた。
そりゃあそうだ、みんな侮蔑されるためにその店にやってくるようなものなんだから。
ヘンリーの客への態度は横柄そのものだ。
ヘンリーのタバコの知識は増える事はなかった。

それと合わせて
ヘンリーには客を侮蔑する理由がもう1つあった。
ヘンリーはよく、店先にベンチを出しては客とチェスに興じていた。
店を出してからヘンリーは負けたことのないほどの腕前だった。
もし負けることがあれば長らく負かした相手はタバコをタダで手に入れられる
そういうことになっていた。

試合中に相手がタバコを吸おうとすると、にらみをきかせたが、
相手が劣勢になるとそれを許した。
その時がもっとも相手を侮蔑でき、優越の快感を得られるのだった。

そんなある日。

街に見た事もないような、大きな車がやってきた。
黒塗りで、中に浮いているように物音1つしなかった。
ボディの黒は暗黒世界への合わせ鏡のようで
宮廷の御車のようだった。
その車が一旦街中で停まり、側を歩いていた鍛冶屋の娘を呼び止めて
なにかを話していた。
その話はすぐに終わったが、その娘は見た事も無いような輝きを放つ
ネックレスを手にして放心状態だった。

黒塗りの御車はヘンリーの前で停まり、
中から、タキシードを着た紳士が、懐中時計で時間を気にしながら、
映画女優のプロマイドよりも美しい貴婦人を伴って店に入ってきた。

「突然に失礼するよ」
「プラチナブルー=イグアナのミントフレーバを私と彼女に頂けないかね?」

ヘンリーはすっかり驚いてしまった。

こんな都会人がなんでまた野蛮なタバコなんかを所望しているのか?
それにプラチナなんたらなんていうタバコは聞いた事がなかったのだ。
「プラチナなんとか、ってのはタバコなんですかい??」
ヘンリーが空白の間に耐えられずおずおずと紳士に問うてみた。

「なんと?タバコ屋なのにプラチナブルー=イグアナが置いてないとな?」

「貴方、もしかしたら、田舎のほうじゃあ知らないんじゃなくって? 申し訳ないわ」

「ねえ、タバコ屋さんプラチナブルー=イグアナはここらでは流通していないの
かしら?今シティでは一番の流行のタバコの銘柄ですのよ?」

ヘンリーはなにがなんだかわからなくなってうろたえていた。
「流行るって都会では今タバコが流行っているのですか?」

「ははは!君は変っているね!タバコ自体に流行廃りもあるかい!」
「パン自体に流行があるかね?コーヒー自体に?牛乳自体に??
こりゃあ面白い!!」

紳士は古ぼけた店内を興味津々に見て回って、軒先のチェスボードに気がついた。
「おっと、チェスがあるじゃないか?だれか打てる人はいるのかい?
ひさしぶりにやってみたくなったよ!」

紳士はそう言い終わるやいなや、ドアを開けすでに軒先のベンチに坐り、
駒を並べはじめていた。

「貴方!ご迷惑よ?それに、私たち急がなきゃパーティに遅れてしまわないこと?!」

ヘンリーはこんな紳士を打ち負かせるとは!とすでに勝った気分で
急いで店先に躍り出た。
綺麗な麗人に「すぐに終わりますからお待ち下さい」
と言いたくて言いたくてたまらなかったが ヘンリーはそれを笑いと一緒に堪えていた。

「私がこの街で一番巧いと言われてます」
ヘンリーは紳士の向かい側に坐り、対戦はすぐにはじまった。

「おや、ずいぶんと古典的な駒使いだね、守備と攻めが6:4か。
このごろシティでは、そんなに守りに割かないもんなんだよ。そもそも攻めと守りは
流動的にやらないと」

ヘンリーがいつもつくっている守りのパターンはすでにくずされつつあった。
「ほら、ごらんよ。私はビショップとポーン3つが守りの要だ。それだけなんだよ」
ヘンリーはその顔を見る余裕すらなかった。

「おっと、これでチェックメイトだ!
タバコ屋にきて、タバコを吸う余裕さえなかったな。
色々古き良きタバコがあったけど、
やはり今はプラチナブルー=イグアナなんだよ。
なにも買わずにチェスに付き合わせてしまって済まんね。
これはチップがわりだ。
はしたないと思われるかもしれないけれど、取っておいてくれないかね。
これはお願いの部類だよ」

紳士淑女はうれしそうに振り向きもせず黒塗りに乗り込み
黒塗りは音も立てずに街を後にして行った。




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2009.01.13

魚の顎、フォーカスと熱量。





クライアントとbook246で待ち合わせ。
食指がうごく寸前に電話が鳴る。

ははは。

あともう10分ほど、自由な時間ができる。
とはいえ、仕事中って鎖があるとがっつりいけないわけで。

ブラウジングモード。

すると、いつもと違うピントになり、
焦点が違うものに合ってくる。

トランプとランプ。
トランプトランプ。

トランプを買う必然性はうなづけるが
トランプを買う偶然性ってあるのだろうか。

トランプを買う時ってどういうときだろう。

トランプの必要性ってトランプの不在が 基本にあり、
トランプそのものを熱烈に欲しがることってあるのだろうか。

壁に魚の写真と魚の詩が貼ってある。
とある人が魚の顎に憑かれたらしい。
魚の顎をパーツで分け、標本を集め
いろいろこねこねしたことを本にしたそうな。

蒐集。

それは結果を求めるわけでもなく、才能を問われるものでもない。

「それを集める理由は?」
って問いに答えられるヤツはいわゆる似非だ。

ちなみに
「それを集める理由は?」
って問いただすヤツはいわゆるなんもわかっていないってわけだ。

ほんまもんの蒐集は評価なんてできないんだよ。

なんて耽っていると待ち人来る。

撮影の現場に。

実際に体調の問題もあるが、まったくやる気がない。

作り出すものにも
過程にも

うまく火をおこせない自分がいて
そもそもすでに火をおこそうとしていないのに
フリをしてごまかしている。

蒐集の話と通じるところがあるのだが、
仕事は向き不向き
というよりは蒐集と同じ、心の熱量だと思う。

才能は過去のアウトプットという成果を物差しに未来を測る尺度の1つにすぎない。

向いている向いてないってのも効率の問題だ。

それらは契約の問題だ。
規定された期待される範囲内のアウトプットを保証するリソースだ。

才能がない
といわれようが
そんなことしたってなんの役にもたたねえ
といわれようが
やってしまう。
「それをやると労力は10倍だけれど、賃金は一緒」
といわれようが関係ない。
そういうものだ。
100年かかって取り憑かれて
振り向いてみたら
ガラクタばかりでも
笑って死ねるような熱量だ。
恋だってなんだって同じでしょうに。

撮影現場は変り、六本木ヒルズ、トウキョウタワーが絶景の
青山の屋上のレストラン。

プールがブルーにライトアップされていて、
人工雪がさりげなく降っている。

こういうところもいいかもなあ

とふと思って
笑ってしまう。

なぜならば、今の自分の姿がそこにまったく似合っていなかった
からだ。

自嘲ではない。
いいかもなあ
と思っても
どこかでそう思っていたとしても
僕は
それに似合う努力を敢えてする熱量を持ち合わせていなかったのだ。
と気付いたからだ。

羨望には
適切な距離感と、適切な熱量でいいのだと。

撮影後
そこで食事をしようとクライアントに言われるが
体調を理由に辞退した。

どうでもよかった。

ふとセックスがしたい、と思ってみたが。
そうでもないことは先刻承知だった。

どうも仕事のやる気がしない。
こういうときは、仕事を自分から切り離して
自分を会社でくくってみる。

熱量を逆にゼロにする。
余計なことを考えないで
仕事をパーツで分け、それを組み立てることだけを考える。
遂行する。

それだけだ。

咳がだんだんひどくなる。
こうやっていじわるをされないと
僕は気管支なんてもんに関心を抱いてやれない。

ジャネット・ウィンターソンを読む。
詩という糸でこんな物語を紡げるその熱量と
物語の冷気にあてられる。

ふとセックスがしたい、と思ってみたが。
ふと1人で思ったときには
必ず自分1人しかそこにいない。

ふとセックスがしたい、と思ってみたが。
相手の顔が思いつかない。

暖かい甘いカフェオレが飲みたい、と思ってみると。
そこには暖かいカフェオレに通じる道ができるものだ。

ねえ、お話をしてよ、ピュー。

さあ、膝を抱えて震えながら眠ろう。





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2008.11.27

あかさたな





あかさたな
そんなルールがあるんだよ。

あかさたな
たのしいな

あかさたな
そんな規則があるんだよ。

あかさたな
うれしいな

あかさたな
そんな制約があるんだよ。

あかさたな
きれいだな

ABC
ってのもあるけれど

あかさたな
はまやらわ

あかさたな
でも伝わらないことだってあるんだよ。

あかさたな
くやしいな

あかさたな
でも伝えたいひとがいるんだよ。

あかさたな
せつないな





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2008.11.16

ブラック&ホワイト





急激な
ストップ&ゴー

唐突な
ラブ&ヘイト

仁義なき
ハイ&ロー

素晴らしき明度差というトーンジャンプの果てには
素晴らしき冥途が広がっている。
色相から色相へのワープを
君は文脈を失ったと色を失うだけなのかい?

呼吸を停めたその先には何が見える?
目を閉じたその先には何が見える?
思考を停めたその先には何が見える?

徹底的な
ブラック&ホワイト
おもわせぶりな
ブラック&ホワイト。

けっしてまぜちゃあいけないぜ?
ねえ
何が見える?
なあ
何を見てる?





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2008.10.13

辺境の雨粒





下北沢の古本屋さんでギネスを飲みながら
本を物色。

『地球を抱いて眠る』駒沢敏器著をゲット。
そのお店の本棚、というか内装は檜でできていて、
さっき買ったその本を開いたら
檜の香りがふわーっと。

彼の出自を、流通して流れ着いて身を寄せていた
その場所を香りであらわすなんて。

この本の書き出しはこうだ。

 旅行作家のブルース・チャトウィンが最後に残した著書は、
 いつものように素晴らしい書き出しの文章で始まっている。
 「どうして僕はこんなところで、
       そしていったい何をしているのだろう」

 この呟きは、存在することじたいの哀しみを指し示している。
大航海時代なんて例にあげるまでもなく人間は外に内に辺境を求めてきた。
日常のカウンターカルチャーとしての辺境。
たしかにここにいるんだけど、消えることのない違和感。
たしかにここが自分の居場所なんだけど、消えることのないいわれなき不安。

異境、辺境、パラレルワールド、未来、過去、異惑星、多人格。。

僕らはいつでもトラベラーになり、色々な世界をのぞく。
そして、結局磁力に吸い付けられるように日常にもどる。

そんな違和感は強烈に根深く人間の根源に植え付けられていて
それは
神だとか悪魔なんてものまでも作り続けてきた。


雨が降っている。
いや、「降っている」というのは誤謬を含む表現だ。
雨粒のその輪郭までありありと見知ることができ
行列のように、その雨の奥行きまでがしっかりと知覚できる。

僕が地面に向かって視線を降ろせば、雨は「降っている」
僕が天に向かって視線を上げれば、雨は「昇っている」

だから誤謬といったのだ。

白いドレスを着た子供たちが踊っている。
足には大人用のウィングチップの黒いブーツを穿いている。
無音、無空のなかで
リズムは、彼らの輪郭だ。
彼らのエッジが強烈に見える子はいまアップテンポだ。
彼らのエッジがぼやけて見える子はスローなバラードだ。
彼らが踏んだステップで弾けた雨粒は、飛散して、細かい雨粒になり
消え入る。
僕らの世界は暗闇に近いほどのグリーンで
禍々しさと神聖さを併せ持っている。
彼らのダンスはバラバラで、シンメトリーだ。
雨のおかげて僕はずぶぬれだ。
ここにくるといつもそうだ。
でも、ここの雨はぬくい。
自分の体温よりは低いのだけれど、不快ではないし、
身体を動かさなければ数時間はそこに居れそうな温度でもある。
雨粒は360°その世界の全てを記憶して映し出す。
世界は雨粒分だけ存在し、雨粒が落ちるその瞬間瞬間増幅される。
僕のまわりの雨粒は僕をも映し出し、合わせ鏡のように
僕を増幅肥大させる。
世界が僕を映し出して、肌色や色々な混合色となって飽和して
僕はまたもとの世界にもどる。

僕がたまに見る辺境の世界。
僕は辺境を刻みたいが故にこんな日記を書いている。
今、手にとっているこの本も
「こんなところで」などと思っているのだろうか。
でも、檜を纏った君は幸せ者だよ。
そして僕もね。



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2008.10.08

グリーンのメタファー、それはジャックのせい。





にょきにょきとそれは天にも届くのさ!

僕はあの豆の木の豆を
空豆だとずーっと思っていた。

だって

空の豆だぜ?
broad な
beanだぜ?

ふつう豆ってさギュッって凝縮されているイメージがあるけど
サヤをあけると雲の上に配置された3粒の空豆。
ふわふわさ。
そりゃあ天空に所属するでしょう、この御豆。
と思っていたらさ

wikipedia調べでさ、

『そらまめ』
花弁の黒点が死を連想させたため、古代ギリシャ人はそら豆を葬儀に用い、
中にはそら豆を不吉として嫌う向きもあった。

!!!!!

古代ギリシアの数学者・哲学者で『ピタゴラス(三平方)の定理』等で有名な
ピュタゴラスはそら豆の中空の茎が冥界(ハデス)と地上を結んでおり、
豆には死者の魂が入っているかも知れないと考えた。

!!!!!

すげえ!
この豆、天空と冥界に繋がっている!!
そうだよね、そうだよね。

ジャックの豆の木もさ、
天空に伸びる木だけとりざたされてるけどさ、
それを支えるだけの根っ子の話には触れていないよね。

絶対すごいことになっているよ!
土という土をかきわけて、それこそ冥界入りしてるよ。
ジャック、豆の木おっちゃったけどさ、
今度は冥界からなに盗んでこようか?





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2008.09.26

旅といえば。。





旅というとね。
どんな風景を思い浮かべる?

ぼくはね、
トンネルなんだ。
列車が通るんだ。

夏なのにね、ひんやりしてるんだ。

湿気がすごいくせにね。
ひんやりしてるんだ。

羊歯とか苔とかがぴったりでさ。
きっと標高が高いんだ。
なのにまだ、穏やかな真っ暗なスロープを列車は登り続けているんだ。

その列車はね。
なんだろな、
いかにも「機械」って具合さ。
シャープじゃないんだ、ごっつくて、石炭で走ってるっていわれても
一瞬信じてしまいそうなやつさ。

もちろん、ぜいぜいと登る喘ぎのようなきしみも、
もちろん、重力と闘ってるんだとばかりに大袈裟な駆動の音も
堂に入ったもんさ。

扇風機しかないんだ。
扇風機の中央にはね、ロケットみないな突起があってね、
その列車の歩み同様、スムースってわけにわいかないんだ、首の振り方は。
同じところで一瞬とまるし、がたがたいって、毎周微妙な違う音を
ぜいぜいたてながら動いてるんだ。

列車はね、外見は、下がオレンジで上がクリーム色。
所謂登山列車そのものってくらい定番で。
ライトはまん丸さ。

塗装がすっごく分厚くて、ところどころ剥げているところは
そうだね、
ホーロー鍋が剥げたみたいにぼろっととれちゃってるの。

トンネルはどこまでも続くようにね、ずっと暗闇を連れてきてくれるんだ。
そういえば、いつトンネルに入ったのか忘れてしまうほどさ。

登山列車にはあまり似合わないけど、
プラスチック製のお茶が売っているといいね、
四角いプラの容器にティバッグをいれるやつ、コップが口の部分に
備え付けてあって。
漫画の「美味しんぼ」ではプラスチックがとけちゃって味が台無しって
言われてたあいつさ。

釜飯なんかより旅情があるのさ。
とうにね、お弁当とかは食べ終わっちゃって、もう、ビールでもないんだ。
風景もなくてさ。
外は真っ暗で。
手持ち無沙汰ってやつさ。
なーんか本って気分でもなくって。
車内広告とかも、数ヶ月先のその土地のお祭りの広告とかで
完全に他人事なわけ。

なーんもやることがないってことに気づいたときさ。
目も耳も鼻も口も頭も特に必要のないあのトンネルの中さ。
道中さ。
そんな時なんだよね。
僕が旅って感じるのってさ。





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2008.09.12

カーニバル





広場ではカーニバルの真っ最中。

となりのマンションの窓からは
ヨカナーンの首の実証見聞がオコナワレテイルノガミエル。
そう、カーニバルの最中ほど淫猥な儀式が似合うときなんてありはしないのだ。

僕はそのヨカナーンの首を肴にボトル1000円の安ワインを飲む。

貶めてやるのだよ。
切られた首をさらにね。

僕はそのヨカナーンの首なんて無視して電話をかけるんだ。
30分ほどして
僕の母親くらいのくたびれた商売女がやってくる。

本来ならばその首にふさわしい美辞麗句をその女に注いでやりながら
ちちくりあい、その首を指差してわらってやるのだ。

調子にのった、ころあいに、その女を蹴り付けてたたき出すのだ。
そいつの笑い声があまりにも粗卑だったからだ。

僕はだんだんいらだってくるのだ。
その首の生命力にいらだってくるのだ。

気がつくと、そのマンションのその部屋には誰もいなくなり、
窓際におかれた、ヨカナーンはこちらをじっと凝視している。

カーニバルも終わっている。
でもおかしいじゃないか。
お天道様はまだてっぺん。
カーニバルが終わるなんておかしいじゃないか。

自分の部屋なのにドアが開かなくなっている。
ヨカナーンはこちらを見ている。

自分の身体なのに四肢がいうことをきかなくなっている。
ヨカナーンはこちらを見ている。

ヨカナーンの目はうすく濁っている。

それは夏の日であるはずだ。
暑く苦しい夏の日であるはずだ。
切られた首に生命力を感じるのは臭気の似合う夏であるはずだ。
僕を狂わせる夏であるはずだ。

僕は自分で目をつぶす。
その闇の中まであいつは、ヨカナーンは追って来てくれると
僕は信じていた。





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2008.08.27

恋敵





日輪の神々しさから我に返ると
庭の柿の樹に神様が

ちょぼん

と降臨なさっていた。

なぜ神様かとわかったかというと、
わかってしまったからだというより他ない。

超常現象をみせろ
だの
死んだ者を生き返らせろだの
そんなことで神様の証をみせつける輩は
神様ではなかろう。

ただ、それができる、神ではなく、他のなにかのほうが
融通がきき、役に立つといわざるをえまい。

神様は

ちょぼん

とそこにいるだけでなんの役にもたたない。

それにしても
あまりにその神様が

ちょぼん

としていたのでお気に入りのA子ちゃんに神様を紹介してみた。

A子ちゃんは
「まあ、なんて立派な紳士なの?でもしゃべることができないのね」
と愚にもつかないコメントを残してくれたので
ぼくのハートはキュンキュンしっぱなしだった。

「とにかく素敵ね、彼」

とA子ちゃんは怒濤のほめ殺しをはじめ
はじめてぼくは神様が恋敵になってしまったことに気がついた。

「A子ちゃん、そんなやつほうっておけよ、ただ
 ちょぼん
 としているだけじゃないか」

A子ちゃんはぷりぷりしてぼくのことを無視しはじめた。

よくみるとただ

ちょぼん

としているだけだと思っていた神様は
なにやら
A子ちゃんになんらかの力を加えていたようだ。
A子ちゃんの黒目は赤くなり、ハートと化していた。
はじめてぼくは
神様がはじめっから恋敵だったことを思い知らされたのである。





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2008.07.16

A perfect world





彼は一睡もせず疲れ切っているようにみえた。
彼女は安らかに部屋のおくに安置されていた。

最後のお別れ。

僕は彼女に酷なお願いをした。

これから
いままで以上に
彼のことを
御願いします。

・・・

彼はなんにも整理も決着もつけないまま
日本の死者への段階をとんとん拍子に彼女は進んでいた。
彼はなんにも整理も決着もつけないまま
励まされ続けていた。

立ち止まらないように
急にぽっかりあいた隣の空席のことを考えないように
そう思えるほど 彼のまわりだけ慌ただしく
それについていってない彼の表情が。
彼女からも世間からも取り残されたように。

そこにぽつりと。

目はなんの情報も追っていないように見えた。
耳は情報を処理するためだけの器官になりさがっているようだった。

・・・

社会にでて、僕らは理想もフィールドも別々に生活してきた。
僕らの接点は同じ目標を持っていたころを線や面とするなら
今の僕らは点となっていた。
点では、彼のこれから味わうだろう孤独を埋める事はできない。
点は刺激はできるが癒しには向いていない。
あらためて僕は自分のできることの少なさを思い知った。

僕は

この悲しみを
彼と彼女という人称を使うか
僕の身近の出来事に代入するしか
実感することができないでいた。
特に代入する経験が少なくともあることで
僕は
年をとったとあらためて思った。

・・・

帰り道。
影のように黒い喪服にくるまれて僕は
とぼとぼと歩いた。
帰り道。
世田谷線。
そののどかな電車の通る跡には錆びたレール。
レールのはしばしからあふれる雑草。
おおきな青空。
そして、電車に置いていかれる優雅な黒アゲハ。

ふと、僕のこうつぶやいていた。

完璧だ。

そう、あまりにも似つかわしくない思いだった。
なぜ、このタイミングでどこにでもある
この風景に、徹底した調和をみたのか。

僕にはわからない。
でも、完璧だったのだ。
電車の速度も
雲の速さも
蝶々の調子も
彼が失った大切な人。
僕が感じた彼の空虚が。
欠落が。
悲しみが。

そんなことは知る由もなくここにある調和が。
そんなこととは文脈を異にする調和が、同じ時に成立している必然が。
かえって、それを僕に現実として投げつけたのです。

その後、不意にその調和は崩れ去った。
ディティールはにじみ細部は歪んで姿を消した。
僕は誰にも気づかれる事なく
静かに涙を流していたのだ。

どうぞ、

これからも 彼を見守ってあげてください。
蝶が舞っている。
今日も暑くなりそうだ。





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