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2007.03.16

どこにもいけない思考の空転がすき

ホルヘ・ルイス・ボルヘス:Jorge Luis Borges
1899年8月24日 - 1986年6月14日
アルゼンチン ブエノスアイレス生まれ
小説家、詩人
本名
ホルヘ・フランシスコ・イシドロ・ルイス・ボルヘス・アセベード


今この瞬間

ボルヘスを読んでいる人ってどのくらいいるのだろう。

その数はきっと

TVを観ているひとよりも
楽しいお酒を飲んでいるひとよりも

きっと

すくないだろう。

星を観ているひとよりも
悲しみにくれているひとよりも

きっと
きっと

すくないだろう。

でもどこかにはいるのではないか

勝手な希望
楽しい空想


今東京に住まう30過ぎの日常にボルヘスは
違和感がある。

丸の内とボルヘス
みずほ銀行とボルヘス
東急ストアとボルヘス

通勤とボルヘス
信号待ちとボルヘス
電車内でのボルヘス

家路を急ぐサラリーマンが車中

ボルヘスを読んでいるともしかしたら心配されるかもしれない。

ジャンプのほうが良い。
ドラッカーなんかのほうがなお良い。

ボルヘスの一編の詩を知るより
銀座のバーを知っていたほうが良い
神楽坂の小料理屋を知っていたらなお良い。

天気のいい休日は
こもってボルヘスとたわむれるより
フットサルをやっていたほうが良い
バーベキューをやっていてもいいだろう。

東京のリアルな生活で

なんの役にもたたない

お金にならない
女性を口説く匕首にもならない
人脈も広がらない

面白い本を紹介して、と言われボルヘスさしだしたら
きっとこまるんだろうな

ボルヘスが差し出してくれるのは
有益な情報でも
解決の糸口でもない

ボルヘスはボルヘスの言葉、それのみを与え得る。



宝の在処も書かれていない、現在地もわからない地図のような
どこへもいけない、だけど思考を与えてくれる

ただそれだけ

結局僕は思考が空転するのが好きな、ただ、それだけなのだ。



 マヌエル・フロレスは死ぬはずさ。
 当たり前のことだものー
 死ぬのは誰もが拒めぬ習慣なのだから。

 明日は銃弾に見舞われて、
 銃弾は忘却を残してゆく。

 物知りマーリンが言っていたー
 死ぬのは生まれたからだとね。

 それでもおれには悲しい、
 人生におさらばするのは。
 こんなに馴染んだ
 恋しくてほっとする人生だもの。

        〜ホルヘ・ルイス・ボルヘス




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