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2007.07.15

礫(つぶて)

しかとそれを握り

憎しみの眼で

憎しみの対象に

投げつける。

力一杯悪意を込めて礫を投げつける。

差別
偏見
憎しみを込めて。

だけれど

そのしかと握られた礫は

掌で包める大きさに限定される。

その礫が放られる遠さは

僕らの腕力の範囲内だ。

そしてその影響力ではぶつけた相手の苦しむのが見えよう。

肉眼で、くっきりと手に取るように見えよう。

いやでも伝わってくるはずだ。

血を流すかもしれない
怒りに逆上し向かってくるかもしれない
痛みに崩れ落ちるかもしれない
その人を庇う誰かを見るかもしれない
悲しみにただくれるだけの姿がそこにあるかもしれない

僕は

それらどんな姿にも

ひるむだろう。

自分の悪意にのせたそれが持っていた
意外な影響力に

被害者意識が一瞬のうちに加害者に取って代わる早業に

僕はひるむだろう。


礫は放った瞬間に
文脈を持つ。

投げた方
投げられた方


加害者、被害者かもしれない
理があるかも理不尽かもしれない

ともかく文脈で繋ぐ。

それは連鎖しない
肥大拡大しない

ボタン一つで何万人をも傷つけたりはしない。
憎しみを果たすのに誰かに依頼なんてしない。

人に礫を投げるのが

どれだけ疲れることなのか

憎しみの眼差しが

どれだけ人をひるませるのか

路傍の礫とそれを握った自分の掌を

しかと眺めてそれを感じてみる。

河原でそれを投げてみる。

バカヤローと

投げてみる。

そして

礫の無くなった掌でもう一度考える。

また礫を探すのか
ほかの道を探すのか

そんな悪意のあり方で僕は生きて行こうと思うのです。

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