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場所はスターリングラード。
時は大戦中。
後世に伝わるスターリングラード攻防戦。
その大規模の市街戦の最中。
一人の小説家は、大海原に漂う枯れ葉のように孤立無援の状況下にいた。
彼はタバコを吸いたかった。
気持ちを落ち着けるためか
末期の一服と
観念したのか。
彼はタバコを吸いたかった。
ただ、タバコを巻く巻き紙がない。
それどころか、紙すらない。
彼が持っている紙といえば、この10年を費やしてきた原稿のみ。
ふと、その原稿と彼の目があう。
沈黙が流れる。
それをかき消す銃撃戦と砲撃がさらに迫ってきている。
彼はタバコを吸いたかった。
おもむろに彼は立ち上がり、ためらいもなく、彼は原稿を破り、
5分ともたぬタバコを満喫した。
銃撃戦と砲撃と、それとは無縁のたゆたうタバコの煙。
10年寝かしたタバコの味はいつもと同じで、
それはもう贅沢だった。
・・・
大切なもの
時々わからなくなる
なにがしたいのか
時々わからなくなる
どこにいきたいのか
時々わからなくなる
普段考えている、夢や希望や。。
それは総じて社会的なものだ。
原稿は、そのままではまったく社会性をもたない。
それは小説かの個人の持ち物だ。
そして、彼はその原稿に社会性を地位をもちろん持たせたかった。
それが、個人のささやかな愉しみに負ける
そんな瞬間。
それは個人の生命が終わる時には顕著だろう。
とても個人的なもの
大切な人との逢瀬
大好きなものと過ごす日々。
それは刹那で、その時しか効果をもたぬ。
意味というものをベネフィットと訳すなら、無意味と言えてしまうような
人生を足を引っ張るもの。
でも、それがない人生なんて。
でも、それが見えなくなる人生なんて。
そんな矛盾が。
僕は人生というもののなかで気に入ってもいるのだ。
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