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2008.02.25

contrail




キュっと冷えた空。


遠い空。


飛行機雲がみえる。


人間が引き起こす現象で数少ない見ていて

なんだかうれしいものの一つだ。



青い空。



シュッと人が作り出したラインが走る。



・・・



英語ではcontrailというそうな、飛行機雲。



air もplaneもcloudもつかないんだ。



なんだか日本語のほうが安直でほっとする。




・・・



実は、飛行機雲に気がつくまでイライラしていた。

「これ以上僕を怒らせないで下さい。」

うまくいかない色の調整に逆に切れる職人にさらに切れてやった。



もちろん、ちっともうれしくなんかあない。



イライラだ。



大人を怒るのも
大人になって怒られるのも



最低だ。



ちょっと、その抜け方を思い出せないくらの


イライラだ。



言い訳ができないくらい色があわない。

クライアントから否定される項目で、決して忘れることのないもの。
ずっと癒えずに、かかえていかなきゃならないもの、それは。



「センス」



私生活で「センス」を否定されたって趣味の相違で逃げられるが、
そうもいかない。



最低だ。



ちょうど指揮者の思い通りにヴァイオリンが、チェロが演奏をしてくれない。
そんなイライラと近しい。



こんなの、よくあることだ。
普段のトラブル対応でしかない。
ブツブツとやりすごそうと、街を歩く。



・・・



そういう時に限って、信号でよく足止めを食う。


その度に信号は交通は整理してくれるけど、
なんだってこんなに心をぐちゃぐちゃにしてくれるのか、


あの赤と青の2つ目を睨んでやる。
ついでに赤と青と黄色の3つ目もだ。
なぜなら同罪だからだ。



やることがない。



風冷たく、なんとなしに、目が空へゆく。




青い空。



シュッと人が作り出したラインが走っていた。





下を見て歩いていた日常の僕と、その非日常のギャップが。
その対比が。



その好ましい人工的な白い直線美が。



肩の力を抜いてくれる。


僕までそれぞれの職人の混乱に、楽器の不調にひっぱられることはない。



出してしまった外れた色や音を嘆いてもしかたがない。



演奏を続けるんだ。



なるったけ上手に
なるったけきれいに。



それが唯一の「センス」が受けた傷を癒すクスリなのだから。


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