恋敵
日輪の神々しさから我に返ると
庭の柿の樹に神様が
ちょぼん
と降臨なさっていた。
なぜ神様かとわかったかというと、
わかってしまったからだというより他ない。
超常現象をみせろ
だの
死んだ者を生き返らせろだの
そんなことで神様の証をみせつける輩は
神様ではなかろう。
ただ、それができる、神ではなく、他のなにかのほうが
融通がきき、役に立つといわざるをえまい。
神様は
ちょぼん
とそこにいるだけでなんの役にもたたない。
それにしても
あまりにその神様が
ちょぼん
としていたのでお気に入りのA子ちゃんに神様を紹介してみた。
A子ちゃんは
「まあ、なんて立派な紳士なの?でもしゃべることができないのね」
と愚にもつかないコメントを残してくれたので
ぼくのハートはキュンキュンしっぱなしだった。
「とにかく素敵ね、彼」
とA子ちゃんは怒濤のほめ殺しをはじめ
はじめてぼくは神様が恋敵になってしまったことに気がついた。
「A子ちゃん、そんなやつほうっておけよ、ただ
ちょぼん
としているだけじゃないか」
A子ちゃんはぷりぷりしてぼくのことを無視しはじめた。
よくみるとただ
ちょぼん
としているだけだと思っていた神様は
なにやら
A子ちゃんになんらかの力を加えていたようだ。
A子ちゃんの黒目は赤くなり、ハートと化していた。
はじめてぼくは
神様がはじめっから恋敵だったことを思い知らされたのである。
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