カーニバル
広場ではカーニバルの真っ最中。
となりのマンションの窓からは
ヨカナーンの首の実証見聞がオコナワレテイルノガミエル。
そう、カーニバルの最中ほど淫猥な儀式が似合うときなんてありはしないのだ。
僕はそのヨカナーンの首を肴にボトル1000円の安ワインを飲む。
貶めてやるのだよ。
切られた首をさらにね。
僕はそのヨカナーンの首なんて無視して電話をかけるんだ。
30分ほどして
僕の母親くらいのくたびれた商売女がやってくる。
本来ならばその首にふさわしい美辞麗句をその女に注いでやりながら
ちちくりあい、その首を指差してわらってやるのだ。
調子にのった、ころあいに、その女を蹴り付けてたたき出すのだ。
そいつの笑い声があまりにも粗卑だったからだ。
僕はだんだんいらだってくるのだ。
その首の生命力にいらだってくるのだ。
気がつくと、そのマンションのその部屋には誰もいなくなり、
窓際におかれた、ヨカナーンはこちらをじっと凝視している。
カーニバルも終わっている。
でもおかしいじゃないか。
お天道様はまだてっぺん。
カーニバルが終わるなんておかしいじゃないか。
自分の部屋なのにドアが開かなくなっている。
ヨカナーンはこちらを見ている。
自分の身体なのに四肢がいうことをきかなくなっている。
ヨカナーンはこちらを見ている。
ヨカナーンの目はうすく濁っている。
それは夏の日であるはずだ。
暑く苦しい夏の日であるはずだ。
切られた首に生命力を感じるのは臭気の似合う夏であるはずだ。
僕を狂わせる夏であるはずだ。
僕は自分で目をつぶす。
その闇の中まであいつは、ヨカナーンは追って来てくれると
僕は信じていた。
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