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2010.07.11

白と黄色






出来たばかりの刑務所は
いやけに静かで清潔だった。

檻の中はからっぽで
まだ見ぬ囚人を待っている。

病院のように整然と区分けされた
その白さは
外界からの情報という菌から隔離されていた。

はじめての
囚人がなぜか1人でやってきた。
愛する女を刺したのだと。

そいつは
白人の太っちょで
肌はいやにつるつるで
伸びてきたヒゲが似つかわしくない
そんな風体で。

監守に食ってかかるわけでもなく
むしろ逆にいつも顔色の悪い監守の
身体を気遣っていた。

「ごめんな、もっと凶悪な強姦魔みたいのじゃないと
 張り合いもないよな」

すると監守はこういった。
「なあに、すぐにそういう連中で溢れかえるようになるさ」

囚人は
なにかを思い出すように妙に高いところにある
がっしりとした窓を眺めてつぶやいた。

「世の中狂ってるよな」

次の日
その囚人は
ボールペンを額に突き刺して
自殺をした。

恩赦で監守が与えた小さなコップには
タンポポが一輪挿してあった。

また、その新しい刑務所には
囚人がひとりもいなくなってしまった。






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