結びつけるものは思想なんてものではなく。。
尋問者は見失う。
自分が追いつめている囚人を問いつめる鋭利な洞察とうらはらに
自分もその弱き囚人と同じ人間なのだということを。
盗聴者は見失う。
自分が盗み聞いている容疑者の織りなすストーリーのなかで
自分が反逆の証を探っているということを。
・・・
『善き人のためのソナタ』
観てきました。
時は1984年11月の東ベルリン。
全国民が10万人のシュタージ(国家保安省)職員と
その協力者20万人によって監視、盗聴、密告されていた時代。
劇作家のドライマンと彼の恋人の舞台女優・クリスタが反体制的
であることを突きとめるべく
シュタージ職員のヴィースラーはドライマンの家を24時間盗聴
する任務に就く。
ヴィースラーは冷酷なまでの尋問のプロ。
最初はそんな2人を暴こうと執拗な眼光を輝かせていた。
しかし
ドライマンとその周りの人々の
自由な人間らしい豊かなやりとりに浸食されていく。
ドライマンの反体制派演出家の親友・イェルスが
国から職業の自由を奪われ自ら命を断った時
ヴィースラーの頬には涙があった。
しかし、西の雑誌の表紙に東ドイツの現状を告白する
反体制文書が掲載される。
その書き手を追うシュタージ(国家保安省)の魔の手は
ヴィースラーよりも強大な権力をかさにドライマンと
クリスタに襲いかかる。。
ドライマンは
クリスタは
無事難を逃れる事ができたのか
ヴィースラーは
職務を遂行するのか
彼らを守るのか
それは映画をみてのお楽しみ。。
・・・
ドライマンの反体制派演出家の親友・イェルスは
国、権力から演出家としての存在を抹消された。
彼が失ったのは演出家としての生命だけではなく
友だと思っていた輩
仲間だと思っていた輩だった。
ドライマンの誕生日パーティでも
イェルスは腫れ物扱い。
誰も寄付きもしない。
そこにドライマンは彼に心から尊敬していると
励ます。
そして
クリスタを励まし、陰ながらドライマンに拍手と
庇護を与えてきたヴィースラー。
僕は彼らに
本当の人と人との結びつきをみた。
「こんなことをしてなんになる」
そんなへたしたら自分を破滅に導くような行動。
しかし、自分の想いにしたがい、アドリブで
その結びつきに導かれ進む。
それは奇しくも、ヴィースラーが尋問の授業の際に生徒に
教えた内容と一致する。
「嘘つきは、覚えてきた言葉にすがろうとする」
そう、それを太陽にかざすと
「真実を見据えるものは、自分の想いで行動する」と言い直すことが
できる。
体制だとか反体制だとか
そんなことではなく
思想なんてものでもない
それらは皆「たくらみ」だ。「謀り事」だ。
それらには目指す頂点がある。目指すゴールという幻想がある。
そのためにはどんな犠牲も辞さないという傲慢さがある。
そんなものでできた結びつきは一度切れたらそれまでだ。
それどころかゴールへの重しであると判断したらはさみで切ればよい。
道の真ん中で邪魔だったらはじにどけてしまえばよい。
だけど
本当に人と人とが1対1で結びつくことができる絆はそんなものを縁と
するものではないのではないだろうか。
結びつけるものは思想なんてものではなく
自然と頬をつたう涙であり、微笑み返す笑顔ではないのだろうか。
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